学校を出たのは五時過ぎ。
 病院には十分もあれば着く。
 誰にものを尋ねるでもなく九階へ向かう。
 長い廊下は足元が見える程度の照明しかついておらず、ナースセンターにだけ煌々と明かりがついていた。
 ほかの階とは比べるまでもなく、経費削減を彷彿とさせる階になっていた。
 これは相馬さんの性格か――。
 少なくとも、翠が入院していたときはこんなことはなかった。
 廊下から病室を覗き込めば、照明はついておらず自然光のみの明るさ。
 この部屋の明るさは寝ている翠を気遣ってのことだろう。
 相馬さんは翠の傍らで点滴を外しているところだった。
「おぉ、来たか」
 いつもより小さな声で言われる。