光のもとでⅠ

「目の前で倒れてくれさえしたら、病弱なのも認めなくはないけれど……」
 ふざけたことを……。
 そんなこと、誰が好き好んで――いや、相手は翠だった。
 なんて答える?
 さすがにこの距離だ、表情を見ることはできない。
「……見せることは可能だと思います」
 嫌な会話の流れ……。
「あら、倒れることを自分でコントロールできるの?」
「いえ……そういうことではなくて、普段からしてはいけない、と言われていることを実行すればいいだけなので」
「え……?」
「たとえば、私が今から百メートルほど全力で走るとします。それ自体はできないわけではないので……。問題はそのあとです」