光のもとでⅠ

 それから五分後くらいには普通に呼吸ができるまでに回復した。
 湊先生が両手をほぐしてくれていたから、もう手の痺れもない。
 でも、涙だけは止まらなかった。
「なんで泣いてんのよ」
「……秋斗くん、私、こんな状態にしろとは言ってないんだけど」
 いつもよりも数段低い栞さんの声。
「……何も言えないかな」
「それは秋斗くんに非があるってことかしら?」
「そう」
 どうしてっ!?
「違うっ、私が……私が――」
 涙としゃくりあげる呼吸がつらくて言葉が喋れない。
「翠葉、また過呼吸になるわよ?」
 湊先生に諭される。
「翠葉ちゃん、ごめん。俺、今日は帰るね」
「いやっ――ちゃんと、知りたい……」
 こんな状態でそんなことを言っても、湊先生も栞さんも秋斗さんも困るだけなのに――。
 でも、このまま自分が何を間違えてしまったのかわからないままなのは嫌だった。
 秋斗さんが怒った理由をちゃんと理解できないのはもっとつらい。
 玄関で音がして、人が入ってきたのがわかった。