腹式呼吸をしようと思ったとき、背中に何かが取り付いた。
 きっと猿――会長だ。
「ほかのことばかり考えてると、司のことターゲットにするよ?」
「会長、下りてください……っていうか、下りろ猿」
「ハイハイ。本当に不機嫌だなぁ……うちの人間目で射殺さないでよ?」
 言いながら敵陣へと戻っていった。
 結果的に、試合には勝ったものの、爽快感や達成感なんてものには程遠い。
 自分の心ここにあらず、という状況が嫌というほどわかった瞬間。

 最終集計と表彰式準備のために、図書棟へ向かう。
 ひとりで歩いていたはずが、テラスを横切るときには翠と海斗、漣以外はみんな揃っていた。
 きっと漣は遅刻。少し遅れてから来るだろう。
 けど、違った……。