バスケの決勝戦のとき、一年B組が陣取っていた観覧席は割と近く、気づけばすぐそこにいたはずの翠がいなかった。
 観覧席に海斗がいないことから、海斗が付き添っていることは察しがつく。
 具合が悪くなったか……?
 さっき薬を飲んでいたことが気になる。
 それとも、この場に居づらいと思ったのか――。
 ハーフタイムになると、観覧席から優太が走ってきた。
「翠葉ちゃん、熱気に負けて戦線離脱だって。桃華ちゃんに聞いてきた」
「ふーん」
 ならいい……。
 ……「ならいい」ってなんだ?
 優太が走って知らせに来るほど、プレイに出ていたのか?
 思考がまとまらないことにもイラつく……。