俺は秋兄に用意してもらっていたものを取りにいくために視聴覚室へ向かった。
 あれは早急に持たせたほうがいい気がする……。
 視聴覚室に着き、皮のペンケースから何の飾り気も無いシルバーのボールペンを取り出す。
 GPS搭載型発信機――翠、何かあれば呼べ。
 本当は俺だけに通知されるシステムでありたかったが、俺だけじゃフォローしきれない。
 だから、藤宮警備と風紀委員の携帯に通知されるように改良してある。
 何かある前に人を呼べ。
 集計作業の進行をチェックしてから桜林館に戻る際、視界に入ったものは特教棟出口手間の階段。
 さっきまでそこに翠がいたかと思えば自然と足がそちらへ向く。