集計をスムーズに終わらせることと、翠を視聴覚室から極力単独で出さないこと。
 そうできれば呼び出される機会を減らすことができると思っていた。
 結果的には失敗に終わったわけだけど……。
 桜林館から出ると、青木がいた。
 なんとなく、待ち伏せされていた気がする。
 外してポケットに入れてあったイヤホンを返そうとすると、
「持ってていいわよ。それ、メール通知後なら学園内にいればどこにいても会話が聞こえるすてきアイテムなの」
 時間的に余裕もなく、立ち止まって話すことでもない。
 特教棟へと歩みを進めたまま話し続ける。
「青木、ひとつ頼みがある」
「あら、天下の藤宮御曹司に何をお願いされるのかしら?」
「翠が殴られるとか、そういうのだけは未然に防いでもらいたい」
 それだけは――。