光のもとでⅠ

 俺や簾条が不快に思う程度には良くない環境だったと思う。
 入学してきた当時の翠の人との接し方を見ていれば、人間不信に陥るほどのものだったと推測するのには十分な材料だった。
 いじめに関する具体的なことまでは考えたことがなかった。
 それを訊こうと思ったこともない。
 思い出させたくなくて……。
 ただ、前を向いてほしいと、今ここにいる人間たちを見てほしいと思った。
 翠は答えられるのだろうか、話すのだろうか……。
 今、どんな顔をしているだろう――。
「あのね」と話し出した翠の声はとても落ち着いたもので、ひとつひとつ確かめるように、丁寧に話し始めた。
『こういう呼び出しとかはされたことがないの』
『どんなのがメイン?』
 風紀委員は翠が話しやすいように誘導する。