光のもとでⅠ

 女――おまえがどこの誰かは知らない。
 けど、翠がどんな人間なのかはおまえよりも詳しいつもりだ。
 翠が言う言葉に裏はない。
『私、どうやっても成績表では学年一位になれないので、テストの点数だけは一位を目指したくて……』
 翠は言われていることを額面どおりにしか受け取らないし、それに対して真っ直ぐな答えしか返さない。
 もっとずるくなることを夏休み中に教えておけば良かっただろうか……。
 やっと桜林館の外へ出られたとき、イヤホンに男の声が聞こえた。
『御園生ちゃーんっ、どこー? バスケの試合応援に来るって言ってなかったー?』
 風紀委員の介入――。
 俺は一足遅れたということか……。
 場所は一階と二階の踊り場だと言っていた。
 あの写真はテラスから撮ったものだった。
 風紀委員があとを追ったとしたら二階から――。