千里が一目惚れするのもわかる。
 私が男でも惚れる。いや、女でも惚れる。
 そんなことを考えている私をよそに、
「言われた、というか……お話をしていただけよ?」
 翠葉ちゃんはそう答えた。
 黒目がちなきれいな目を私に向けて。
 その目は彼女たちが怖くて言えない、というふうでもなければ、彼女たちをかばっているという感じでもなく……。
 ただ、本当に「話してただけだよ?」と素で返された気がした。
 気にはなったものの、「そう?」と聞けば、「うん」と普通に笑うものだから、ちょっとその場に留まることにしたのだ。
「私、髪の毛を直しに来ただけだから、続きどうぞ? でも、トイレでお話ってかなりおかしな状況だけど」
 私はチクチクと嫌みを添えて鏡に向かった。