「じゃ、もう少し困ってもらおうかな」
 意地悪な笑みに身をかまえる。と、
「これ、食べてね」
 秋斗さんはゼリーが入ったグラスを手に取り、右手にはスプーンを持っていた。
「これ、食べてもらわないことには俺が栞ちゃんに怒られるんだ」
 怒られる、と言いながらも嬉しそうだから性質が悪い。
 これだけは嫌だったのに……。
「翠葉さん、眉間にしわ寄ってますが……」
 だって、恥ずかしい……。
「ショックだなぁ……。昨日は若槻にスープ飲ませてもらったのに俺はだめ?」
「だめというか……恥ずかしいから嫌なだけですっ」
 目を合わせることはできなくて、ずっと緩められたネクタイを見ていた。
「でも、苦行だと思ってがんばってください」
 と、口もとにスプーンが寄せられた。
 それに対しては条件反射で口が開く。
 口に、甘酸っぱくて冷たいゼリーがつるんと入った。
「食べられそう?」
 訊かれてコクリと頷く。