「そんなふうに泣かなくていいから」
 でも、悔しかった。
 薬のせいで仕方ないことはわかってる。
 それでも、短時間ですら体を起こすことができない自分がどうしても情けなく思えた。
「ほら、泣いたらその分水分摂らなくちゃ」
 と、栞さんが作り置きしてくれているハーブティーを口もとに運ばれる。
 ご丁寧にもストロー付きだ。
 一口二口飲むと、口の中がミントの清涼感でいっぱいになる。
 それはちょっとした気付薬みたいなもので、吐き気がすっと引くのがわかった。
「少し待ってて」
 秋斗さんは立ち上がる。少しして洗面所のドアを開ける音がした。
 戻ってきたときには手に濡れタオルを持っていた。
「顔を拭いたらリセットできそうでしょ?」
 優しく笑ってタオルを差し出された。
 ……優しすぎる。
 そんなに優しくされると困るのに……。
「あれ? どうしてまた困った顔?」
 もう、どんな顔も見られたくなくて、タオルを顔に付けたまま答える。
「秋斗さんが優しいから困る」
「俺が優しいと困る?」
「嬉しいけど困ります」