あんのバカ……。
 この流れだと確実に頭を下げる。
 そう思えば座って見ていることはできなくなった。
「あの、すみません……まだ体調が本調子じゃなくて……ぶつかったときの振動とかそういうのが怖くて……ごめんなさい」
 頭を上げる前には翠の背後に立つことができた。
「頭下げるくらいなら座れ」
 とりあえず、頭を上げないように右手を頭に置き、左手はお辞儀をした状態の肩を押さえる。
 頭はいいはずなのに、こういうところの学習能力が欠如しすぎ……。
 でも、すごく律儀。
 間違いなく、「ごめんなさい」と「お辞儀」はセットだと思っているに違いない。