光のもとでⅠ

「さ、お昼に何か食べなくちゃね。栞ちゃんからメールが届いて、グレープフルーツのゼリーを食べさせてって言われたけれど、食べられそう?」
「はい」
「じゃ、ちょっと待っててね」
 と、ワイシャツの袖をまくってキッチンへと入っていった。
 どうしよう……。ただ袖をまくっているだけなのに、それだけでドキドキしてしまう。
 さっきからずっと心臓がバクバク鳴っていて苦しいくらい。
 自分で心拍数をコントロールできたらいいのに。
 ……とりあえずは深呼吸かな。
 深く息を吸って最後まで吐く。四回目をしようと息を吸った途端に、
「なんで深呼吸?」
 という声が、背もたれ側からかけられた。
「きゃぁっ」
 びっくりして叫んでしまう。
 そんな私を見て秋斗さんは穏やかに笑う。
「なかなか降参しないよね?」
「……降参、ですか?」
「こんなに俺のことを意識しているのに、どうして流されてくれないかな?」
「っ…………」
「気持ちに流されてしまえば、そんなに困った顔ばかりしなくて済むのに」
 上から顔を覗き込まれて顔が熱くなる。
 なんて答えたらいいのかわからない。