「カノン、一年が一番身動きとりやすいよ? 再来年は今年よりも大きなものを製作しなくちゃいけなくなるから実行委員なんてできないかもしれないんだよ? 今やらないでどうするのっ!?」
そうね、香乃は美術部だから、再来年はきついかもしれない。
「香乃、どうする?」
 教卓の前から訊いたけど、返事はない。
 何を悩んでいるのか……。
 すると、私の背後にいた佐野が動いた。
「七倉、一歩踏み出してみたら?」
 佐野が教壇の一番端まで行き、香乃に声をかけた。
 教壇から下りると、さらに言葉を続ける。
「推薦ってさ、推薦した人の期待も信頼もかかってると思うんだよね」
 香乃ははっとしたように顔を上げ、佐野の顔を見ている。
 少し顔を赤らめたけれど、まだ何か考えているみたい。