会話に気づいた海斗が振り返り、
「俺がついていく」
 と、すぐに翠葉の右腕に手を添えた。
「まだ大丈夫だよ。普通に歩ける」
「いいから」
 海斗の二言目には素直に従った。
 ……こんな子だったかしら?
 ううん、違うわ……。
 自分で体調が悪いとか悪くなるとか、そういうことを人に話す子ではなかった。
 蒼樹さん……翠葉が変わりました。
 今朝、話には聞いていたけれど、本当に――。
 でも、それがあの男の「努力の賜物」というのがやっぱり面白くない。