学校に着き階段を上がっていると、聞き慣れた声が聞こえてきた。
 澄んだ高い声に低く落ち着いた声。
 だけど、知っている人物の会話にしてはずいぶんと様変わりしている。
「始業式、桜林館の空調をフル稼働するように秋兄に言ってあるけど、少しでも血圧が下がり始めたら座れよ?」
「うん」
「それから、図書棟に移動するときは簾条か海斗と――」
「ツカサっ。私、そこまで子どもじゃないっ」
「……わかった。俺が連れていくのが手っ取り早い。教室で待ってろ」
「ちょっとっっっ!?」
 間違いなく藤宮司と翠葉の会話なわけだけど……。