この夏休み、日課がひとつ加わった。
 翠葉が入院して一段落ついた頃から、蒼樹さんの朝のランニングコースがうちの方面へと変わり、五時半頃に川辺を十分ほど一緒に歩く。
 その時間がいつも待ち遠しかった。
 恋愛って不思議……。
 ほかの人と話したらどうでもいいようなことまで特別な会話に思えるから。
 翠葉は無事に退院できたから、今日から学校へ登校してくる。
 そんな朝――。
「桃華、悪いんだけど、翠葉のこと頼む」
「言われなくても……」
 蒼樹さんの顔を見れば、メガネの奥で瞳を不安げに揺らしていた。
 相変わらず翠葉思いの人。