「だって……私、パジャマだし……髪の毛ぐちゃぐちゃだし、汗たくさんかいたけどお風呂入ってないし――」
 言うと、ふたりは顔を見合わせた。
「そっか、そうだった。翠葉、女の子だもんな。気になるよな」
 不覚、といった顔をする蒼兄に対し、湊先生はケラケラと笑っていた。
「大丈夫よ。栞のことだから、美波さんから在宅介護用のシャンプー台くらい借りてきてると思うわ。体はあとで拭いてくれるわよ」
「……在宅介護用のシャンプー台?」
 尋ねると、トレイを手にした栞さんが戻ってきた。
「あぁ、昨日のうちに借りてきてあるからあとでサッパリしましょうね」
 さも当たり前のように言われて、今度は話についていかれない私と蒼兄が顔を見合わせる。
「髪の毛洗って体拭いたらルームウェアに着替える。ほら、問題なし」
 と、何も問題ないフラットな状態にされてしまう。
「それでも困る?」
 湊先生に訊かれたけれど即答はできなかった。
「側にいるくらい許してやんなさい。アレを避けて通るのは至難の業よ? そんなことに労力使わず、空気くらいに思っておけばいいのよ」
 それができたら苦労しません……。
「翠葉、大丈夫だよ。先輩だって仕事があるだろうから、そうそう翠葉にかまってばかりもいられないはずだ」
 そう言われて少しほっとした。