何よりも愛しい存在……。
 碧さんもそう思っていると思っていた。
 仕事の合間にランチで会うとき、たいていが子どもの話だった。
 そういう付き合いをしてきたからこそ、あんなに苦しんでいる翠葉ちゃんを息子ひとりに押し付けて、遠く離れた場所で仕事をしている碧さんが信じられなかった。
 あの日、ベランダに出たとき、耳を疑う話し声が聞こえてきた。
 うちの隣の部屋は楓くん、その隣はゲストルーム。
 そこから声が聞こえてきたからだ。
 その声はほかの誰でもなく、紛れもなく碧さんと楓くんのものだった。
「……体調は大丈夫なんですか?」
「えぇ、なんとか……」
「でも、顔色悪いですよ?」