「いいよ。行って求婚でもなんでもすればいい」
「…………」
「ただし、相手は翠葉だからね? 一筋縄じゃいかないよ」
 そう言って、手をヒラヒラさせながら建物の中へ入っていった。
 その後ろ姿を見ていたら、
「零樹さーんっ! ここ、何か違うことになってませんかっ!?」
「あぁ、ここね。このほうが採光優良物件だと思わない?」
「確かに……。それで設計変わってたんですか?」
「ごめんね。でも、一応計算も全部済ませて付箋をつけてたはずなんだけど……」
「だーかーらっっっ! 付箋紙の粘着には永久持続性はないって何度も話してるじゃないですかっ! もぉ~……それ、絶対にどっかに落ちてますよ。次こそはセロハンテープを使うなり、クリップを使うなり、最悪図面に直接書き込んでくださいっ」
「はーい」
 なんとも暢気な会話である。が、目の前に建つそれは――。