「キスマークをつけたときは、彼女のキャパシティなんて考えもしませんでした」
零樹さんは笑いをおさめ、優しい大人の顔になった。
「誰がキスマークひとつであんなことになると思う? 誰も思わないんじゃないかな? たいていがあんなことになる前に、自分自身でなんとか乗り越えられちゃうもんだ」
そこまで言うと、両脚の上に組んでいる手に視線を落とした。
「俺はさ、確かに箱庭娘を作り上げちゃった親なんだけど、だからといって、今までと同じように囲って守って――ってことはもうしたくないんだよね。もちろん、翠葉が無意味に傷つくのを見過ごすつもりはないよ。たださ、今までのことにはちゃんと意味があったと思うんだ」
親の顔――娘を思う親の顔だった。
零樹さんが顔を上げると、嬉しそうににこりと笑う。
「何よりも、君はあんな状態の翠葉を受け入れてくれている。それがどれほど嬉しいことか、君にはわからないだろう?」
「どういう――」
「君は翠葉を結婚相手に、と考えてくれているんだろう?」
「それをどうして――」
俺はまだ挨拶にすら伺ってはいなかった。
零樹さんは笑いをおさめ、優しい大人の顔になった。
「誰がキスマークひとつであんなことになると思う? 誰も思わないんじゃないかな? たいていがあんなことになる前に、自分自身でなんとか乗り越えられちゃうもんだ」
そこまで言うと、両脚の上に組んでいる手に視線を落とした。
「俺はさ、確かに箱庭娘を作り上げちゃった親なんだけど、だからといって、今までと同じように囲って守って――ってことはもうしたくないんだよね。もちろん、翠葉が無意味に傷つくのを見過ごすつもりはないよ。たださ、今までのことにはちゃんと意味があったと思うんだ」
親の顔――娘を思う親の顔だった。
零樹さんが顔を上げると、嬉しそうににこりと笑う。
「何よりも、君はあんな状態の翠葉を受け入れてくれている。それがどれほど嬉しいことか、君にはわからないだろう?」
「どういう――」
「君は翠葉を結婚相手に、と考えてくれているんだろう?」
「それをどうして――」
俺はまだ挨拶にすら伺ってはいなかった。


