光のもとでⅠ

「でも、想い人の意思を踏みにじるようなことはしない。……そうだろ?」
 そうできたなら良かった……。
 あのときの俺は本心でキスをしたんじゃないだろうか。
 冷徹になれ、と自分に言い聞かせ、まるで仮面をかぶったから仕方ない、と言い訳していたのではないだろうか。
 そんな思いが頭をよぎる。
「キスをした時点で、彼女の思いを踏みにじっていたと思います」
「秋斗くん、ケースバイケースだよ。うちの娘は一筋縄じゃいかない。そうだろ?」
「それはもう……」
「はははっ!」
 零樹さんは軽快に笑い飛ばす。
 俺、ここに何をしに来たんだっけ……。
 このままこの人のペースにはまると、謝罪とかそんな話から逸れてしまいそうで怖い。
 来た意味がなくなることだけは避けたい。
 話を本筋に戻そう。