「来るって聞いていたから弁当はふたつ用意してあるんだ。外に食べに出る時間はちょっと惜しいからね。俺のお勧めスポットに招待するよ」
 そう言って、あらかじめ用意されていたらしき包み袋を手に取り、その部屋から出た。
「周防ちゃーん、飲み物残ってるー?」
 現場の人間らしき人に声をかければ、
「零樹さん、クーラーボックスじゃ限界って先日冷蔵庫買ったじゃないですか。あの中にガンガンに入ってますよ。さっき業者が来たばかりです」
「あ、冷蔵庫の存在忘れてた。俺、ずっとクーラーボックス使ってたよ。そっかー、そうだよね、俺が我慢できないってオーダーしたんだった。どおりでクーラーボックスに補充されないわけだ」
 あまりにも緊張感のない会話に、つい自分の心まで解きほぐされてしまいそうになる。