「翠葉、翠葉が大丈夫なら俺は大学へ行くよ」
 翠葉は何かを悟り、俺ではなく秋斗先輩へ言葉を向けた。
「……秋斗さん、大丈夫です。蒼兄がいなくても平気」
 こういうところ、本当に敏感に察知するのが翠葉だな、と思う。
 不安そうに、「……そう?」と先輩が訊けば、
「痛みもかなり引いているし、気持ち的にも安定しているので……」
 と、天使のような笑みを添えた。
 だいぶ痩せてしまったものの、翠葉を包む雰囲気はいつものそれに戻っている。
 秋斗先輩が中庭へ行かないか、と提案すれば、目を輝かせて喜んだ。
 相馬先生の許可を得たあと、
「翠葉ちゃんがほかの男を褒めていると嫉妬しそう……」
 そう零すくらいには秋斗先輩も我を取り戻したように思えた。
 あぁ、ふたりとも大丈夫だ……。
 そう思いながら一階へ向かう。