そして今日――。
 俺は今秋斗先輩と翠葉のいる病室へと向かっている。
「そんなに緊張しなくても――」
 俺が声をかけざるを得ないくらいに先輩は緊張していた。
 俺が一緒じゃなくても大丈夫だろう、という確信はある。
 だから、ひとりで行っても大丈夫だと伝えたが、先輩本人が「最初だけでも一緒にいてほしい」と言う始末……。
 意外な一面見えたり――。
 病室に入れば、翠葉は音楽を聴いて過ごしていた。
 声をかければ、「あ」って顔でにこりと笑う。なんの気負いもなく。
 その顔を見て、大丈夫だ、という確信は強まった。
 逆に、一緒に病室へ入った先輩はさらに緊張を増した感じ。
 あなた、誰ですか……?
 先輩は全く余裕のない人になっていた。
 この夏、翠葉は色んなものを乗り越えた。
 なら、先輩――先輩もこのくらい乗り越えなくちゃだめですよ。