もっとも、あっちに座っている人間はみんな病室の話に耳を傾けているわけで、まず間違いなくこっちの会話は気にしていないだろう。
「正確には所在不明っていうか……行方くらましてたっていうか、雲隠れ?」
 頭痛い、って感じで唯がソファに転がる。
 小柄って便利だな……。
「その間、蔵元さんとふたりだけでフォローしてたから話す暇とかなくってさぁ……」
 唯は手に持っていた紙パックをひょい、と投げてゴミ箱に捨てた。
 あまりにもきれいなシュートラインに感服。
「でも、GPSとかついてるんだろ?」
「それがさぁ……携帯の電源入ってないは、パソコン持っていってないは、車はマンションに停めたまんま。オーナーが目くじら立てて探しても見つからなかった。そこで、彼――司くんの登場。彼が仰せつかって見事に探し出して連れて帰ってきた。それが昨日の話」
 秋斗先輩――。