八月八日――。
 栞さんから連絡があり、秋斗先輩が翠葉に会いに来るということを知って、俺と唯は慌てて家を出た。
 司が一緒だとは聞いたものの、それでも安心という言葉には程遠い心境だったから。
 俺たちがたどり着いたときには病室の前に栞さんと湊さんがいて、楓先輩まで駆けつけた。
 ナースセンターの中には呆れた顔をした相馬先生。
 その隣には栞さんの旦那さん、神崎先生もいた。
 ドアが開いているから耳を澄ませば病室内の会話は聞こえてくる。
 四月からの話をしていたのだろうか。
 今は、幸倉の家に帰ってきてからの話をしているようだ。
 三人は現実に基づいた話をしており、振り返らずに目を瞑りたくなるような、そんな内容だった。
 なのに、俺はどこかほっとしたんだ。
 翠葉が何をどう考えて行動していたのかを人に話しているのを聞いて。
 思っていることをなかなか口にできない翠葉が、言葉にしているのを聞いて安心した。