「くっ、早速お兄ちゃんなんて呼ばせて、あんた図々しいわっ」
言って、湊先生が若槻さんの背中をバシバシと叩く。
「妹にお兄ちゃんって呼ばれるのは夢なんですよ」
若槻さんがぼそりと零した言葉を逃がさずに、
「何、おまえ妹さんになんて呼ばれてたの?」
と、秋斗さんが尋ねる。
「黙秘権を行使します……」
「唯、唯くん、唯ちゃん――」
と、蒼兄が敬称を変えて呼んでいくと、そのどれにも反応を示した。
「くっ、まじで!? おまえ、相当かわいかったんだろうな」
秋斗さんはおかしそうに笑った。
確かに若槻さんはきれいだしかわいい。格好によっては女の人にも見えるだろう。
「とにかく、唯ちゃんだけは勘弁」
と、私を見た。
「さすがにそれは言わないです」
「なら良かった」
と、部屋を出ていく。
私はベッドから見送り、栞さんと蒼兄は玄関まで見送りに出た。
それにしても、唯ちゃん、か……。
あの反応からすると、「唯ちゃん」と呼ばれていたのだろう。
ユイちゃん――どこかで聞いたことのある響き。
記憶を手繰り寄せると、きれいなお姉さんがそう口にしているのを思い出した。
どんな顔だったのかは細かく覚えていないけど、とてもきれいな人だと思ったのは覚えている。
『ユイちゃんが来てくれないの』
寂しそうに口にしたお姉さん。
その晩、私はとても懐かしい夢を見た。
言って、湊先生が若槻さんの背中をバシバシと叩く。
「妹にお兄ちゃんって呼ばれるのは夢なんですよ」
若槻さんがぼそりと零した言葉を逃がさずに、
「何、おまえ妹さんになんて呼ばれてたの?」
と、秋斗さんが尋ねる。
「黙秘権を行使します……」
「唯、唯くん、唯ちゃん――」
と、蒼兄が敬称を変えて呼んでいくと、そのどれにも反応を示した。
「くっ、まじで!? おまえ、相当かわいかったんだろうな」
秋斗さんはおかしそうに笑った。
確かに若槻さんはきれいだしかわいい。格好によっては女の人にも見えるだろう。
「とにかく、唯ちゃんだけは勘弁」
と、私を見た。
「さすがにそれは言わないです」
「なら良かった」
と、部屋を出ていく。
私はベッドから見送り、栞さんと蒼兄は玄関まで見送りに出た。
それにしても、唯ちゃん、か……。
あの反応からすると、「唯ちゃん」と呼ばれていたのだろう。
ユイちゃん――どこかで聞いたことのある響き。
記憶を手繰り寄せると、きれいなお姉さんがそう口にしているのを思い出した。
どんな顔だったのかは細かく覚えていないけど、とてもきれいな人だと思ったのは覚えている。
『ユイちゃんが来てくれないの』
寂しそうに口にしたお姉さん。
その晩、私はとても懐かしい夢を見た。