あ――。
「あぁそう……忘れてたわけね」
「違っ――くはないけど、でも……好きと怖いは正比例なんだよ?」
「何それ……」
「だから……すごく好きで大切な人ほど離れていっちゃうのは怖いから……だから、怖くて言えなかった」
 すごく――すごく怖かったんだよ?
「ふーん……別に、翠から話さないならこっちから切り込むまでだけど。そのたびにこんなに泣く羽目になるなら自分からカミングアウトしたほうがいいんじゃないの? 俺、そのあたりは容赦ないよ」
「……私からツカサに話してたら、そしたら――」
「今朝ほどには突き放さなかった。もう少しくらい加減した」
 そうなんだ……。
「……でも、突き放しても、どんなにきついことを言っても、ツカサはそれだけじゃないよね? また、手、つないでくれる……」
 気づけばつながれた右手はあたたかくなっていた。