光のもとでⅠ

「悪いけど、俺に『甘さ』は求めないでもらえる? 俺に標準装備されてるのは無愛想と誰かさんが命名した氷の女王スマイル。別名、絶対零度の笑顔のみ」
 そういう問題じゃないんだけどな……。
「いい加減話せ。なんで泣いていたのかを」
「……どう話したらいいのかわからない」
「どこからでもいい。だいたいの想像はついてる」
「じゃぁ、なんで訊くの?」
 私の足は勝手に止まる。
「……やめたんだ。翠を見てわかったつもりになるのは。翠が思ったこと、感じたこと、考えていることを翠の口から聞く。そう決めたんだ。夏休みにもそう話したはずだけど?」
「……いつもなら勝手に表情読んで先回りして答えをくれるのに」
「差し支えないときならそれでいい。でも、これは違う」
 私はごくり、と唾を飲み込み口を開く。