ふたりが出ていくと、栞さんがベッド脇に来たので蒼兄が場所を譲る。
 栞さんは私の手首を取り、左手と右手のを交互に握った。
「こんなに冷たくなっちゃうのね」
 栞さんの手は大きくない。けど、ものすごく優しくてあたたかい。
「今までもそうだったのかしら……。気づかなくてごめんなさいね」
「あ……今まではお布団の中に手を入れていれば大丈夫だったんですけど、最近はタオルケットだから……」
「そうなのね。……そういえば、翠葉ちゃんお手洗いは大丈夫?」
「……行きたいです」
 いつもなら蒼兄か栞さんに言う。でも、ほかにたくさんの人がいて言い出せなかった。
「うん、じゃぁ行こう」
 と、手を貸してくれる。
 体を起こすのはつらいから、四つんばいになることで頭と心臓の位置をキープする。この体勢ならそこまでひどい吐き気に見舞われることはない。
 でも、女の子としてどうなのかな、とは思うの。
「貞子みたいでやだなぁ……」
 ボソリと零すと、その場にいた三人が各々吹き出した。
 ひどい……。