光のもとでⅠ

 かばんを手渡すことのできる距離に動揺する。
 動揺よりも緊張、かな……。
「体調は?」
 すぐ近くから聞こえる声。
 何度も聞いた声で、何度も訊かれたことのある問いかけ。
 なのに私は、「大丈夫」と答えて失敗する。
「やりなおし」
 間髪容れずに訂正を求められた。
「……微熱があるけど大丈夫」
 要約しすぎって怒られるかと思ったけれど、そんなことはなかった。
「本当はバスに乗せたいところだけど、バスじゃゆっくり話しなんてできそうにないから歩くよ」
 そう言って、ツカサは桜香苑に続く道へと進路を変える。