幸い、一年B組の下駄箱前にクラスメイトは誰もおらず、ほかのクラスの人たちが数人いるだけだった。
 そんなことにすらほっとする。
 ツカサは私が靴に履き替えたのを確認すると、何も言わずに昇降口を出た。
 私は手ぶらのままでその背中を追う。
 三メートルくらいの微妙な距離を保って歩いていると、ツカサが立ち止まり、顔だけをこちらに向けた。
「一緒に歩けないほど速く歩いているつもりないんだけど」
 確かに、朝のそれとは違う。
「……あのねっ、かばん、自分で持てるっ」
「……話噛み合ってないけど?」
 そうは言いつつも、右手にふたつ持っていたかばんのひとつを渡された。
「ありがとう……」