そこかしこに違うものは垣間見えるのに、私の心は柔軟さに欠ける。
「翠」
 顔を上げると、二年の下駄箱ではなく一年の下駄箱の間からツカサが顔を覗かせていた。
 無言で「早くしろ」と言われている気がして足が竦む。
 そんな自分を叱咤して、足を前に踏み出す。
 右左右左――必死で足に指示を送る。
 そうでもしないと歩くことすらできそうにはなかった。
 それくらいツカサが怖い……。
 それでも、ツカサの待つ場所まで行かなくちゃいけないと思うのは、好きと怖いが正比例だとわかっているから。
 中学のときとは違う――わかっているのに……。