私に視線が合っていたはずなのに、今は明らかに違うものを見ている。口を半開きにして……。
 振り返ると、そこにはツカサが立っていた。
「ツ、カサ……」
 ごくり、と唾を飲む。
 おまけに、足が竦んでその場から動けなくなってしまった。
「藤宮先輩、ちょっとたんまっっっ! 翠葉ちゃん、今色々と混乱してるだけですからっ」
 空太くんが私とツカサの間に入ってくれる。
「だから何?」
 ツカサの声はとても冷たい響きをしていた。
「だから――えぇと……あまり手厳しいことは今ちょっと……」
「無理。翠、病院まで付き添う。御園生さんには連絡してあるし了承も得てる」
「っ……」
「ついでに、高崎に訊かなくても直接俺に訊けばいいんじゃない? 翠に言った張本人に訊くのが一番いいと思うけど? ……教室からかばん持ってきたからこのまま行くよ」
 ツカサは私の返事を待たずに昇降口へ向かって歩きだした。