そこへ、「なんの話?」と廊下から若槻さんが会話に加わった。
 後ろには湊先生も栞さんもいて、栞さんの手には少し大きめのトレイ。
 コーヒーの香ばしい香りがするから、みんなにコーヒーを持ってきたのだろう。
「カイロを買ってくるって話」
 と、蒼兄が言えば、
「それなら俺が行ってきます。普通の大きさ? 小さいの? それとも貼れるタイプ?」
「貼るタイプのはかぶれちゃうから普通のやつ。小さいのでも大きいのでもどっちでも大丈夫。それから手首に固定できるように包帯もお願いできるかな」
「了解。ってことはコンビニよりもドラッグストアって感じだね。栞さん、この辺にドラッグストアありますか?」
 若槻さんが訊くと、栞さんではなく湊先生が口を開いた。
「うちにあるかもしれないわ。若槻荷物持ちで一緒にいらっしゃい」
「えー!? 荷物ったってカイロじゃないですかー」
「いいから来るっ! 食後の散歩は美容にいいのよっ」
「美容にいいったって一階上に上がるだけじゃないですか」
 若槻さんはブツブツ文句を言いながら部屋を出ていった。