また、景色から色がなくなったらどうしよう……。
 中学のとき、学校はいつでも灰色の世界だった。
「何かあった?」
 前の席の海斗くんが振り返る。
 飛鳥ちゃんの視線も感じるし、きっと桃華さんも……。
 少しだけ視線を上げると、佐野くんもこちらを見ていた。
 授業が始まる前だから席は立たないけど――そんな感じ。
 私は……。
「海斗、俺今日英語当たるんだけどさ、これ間違ってないか見てよ」
 空太くんがノートを手に海斗くんに話しかけた。
「ん? あぁ、これは……」
 空太くんのノートを覗き込むことで海斗くんの意識は私から逸れた。