「ね?」
 空太くんに顔を覗きこまれて、また涙がじわりと浮かぶ。
「空太、何泣かせてんのよっ」
 小川くんの隣の席の聖子ちゃんだ。
 どうしよう……わかっているのに、どうしてだめなんだろう――。
「翠葉ちゃん、焦る必要ないけどさ、川岸先生来たから席までは急ごう」
 空太くんに背中を押されて教室を移動した。