光のもとでⅠ

 若槻さんは泣けないと言ったけど、たぶん、心ではずっと泣いているんじゃないだろうか……。
「セリはね、とにかくワガママで気が強い子だった。いったい何様だよ、って言いたくなるような子で、そんなところはリィとは似てない。セリがリィみたいだったら、こんなふうにスープを飲ませてあげられたのかな」
 言いながら、スープを口もとへ運ばれた。
「……やっぱさ、長期的に付き合ってよ。少しずつ、無理のないように話すから。俺が抱えてるものってぞんがいダークなんだよね。だから、こんな状態のリィに話すことじゃないわ。それに俺も今はまだ話すの無理っぽいから」
 その言葉には嘘や無理が混じっていなくて安心して聞いていられた。
 だから、コクリと頷いた。
「リィもさ、いきなり俺があんちゃんだって言われても難しいだろうから、だから、少しずつ慣れてよ」
 その言葉が嬉しかった。「少しずつ慣れて」という言葉が――。
「あれっ!? なんで泣くのっ!? どこら辺にスイッチあった!?」
「……嬉しかったから」
「ええええ!? 何がどの辺が!?」
「あ、えと……あの、どうしよう……」
 涙を手の甲で拭おうとしたら、
「ちょっと待って」
 と、私がさっき落としたティッシュの箱を拾い、何枚かティッシュを引き抜いて涙を拭いてくれた。
「この泣き虫め」
「……若槻さんの分まで泣いてるだけです」
「あ、意外と負けず嫌いちゃんだね?」
 言われて少し笑う。と、若槻さんもクスリと笑った。
 そうこうしていると、ドアの前で固まる人がいた。