エプロンをした栞さんが入ってきて、
「さ、遅くなっちゃったけど夕飯にしましょう」
 栞さんの手にはトレイ。載っているものがスープカップだから私のスープだろう。
「じゃ、俺は翠葉にスープを飲ませてから行きます」
「あらそう?」
 言いながらトレイは蒼兄の手に渡った。
 その様子を若槻さんがじっと目で追っている。
「……リィはそれしか食べないの?」
「……えと、今だけです。この時期だけ……」
 極力心配をかけたくなくて笑みを添える。
「あと少ししたら湊も来るわ。そしたら点滴入れてもらえるから」
 と、栞さんが補足してくれた。
 こんな状態になってからまだ一日しか経っていない。なのに、とても長い時間が過ぎたように感じる。
 昨日からの出来事を思い返し、今日もみんなはいつもと変わらない一日を過ごしているのだろうか、と思う。
 早く時間が過ぎてくれたらいい……。でも、そう思っているときに限って、時間は嫌みたらしくゆっくりと過ぎていく。
 まるで一歩一歩を踏みしめて、周りの景色を見落とさないように歩いているのではないか、と思うほど。
 実際には一分の長さも一秒の長さも変わってなどいないというのに……。