「なるほど……。だから広報部になんの通達もなかったんですね」
「さ、こちらよりも本館の方があたたかいですよ。お嬢様、あちらへ戻りましょう」
 私は木田さんに促されて歩きだした。
 きれいなチャペルだったけど、写真のことは思い出せなかったな……。
 でも、この写真があの場所で撮ったものであることはわかった。
 それに、蔵元さんと初めて会ったときのことも思い出せた。
 今はそれで良しとしなくちゃ……。
 ここのところ、立て続けに思い出していることもあり、もしかしたら――と少し安易に考えていたかもしれない。
 でも、物事はそんなにとんとん拍子に進まない。
 それが常だと認識しなおさなくてはいけない気がした。