携帯に目をやると、七時四十五分と表示されている。
「……今のお時間お忙しいんじゃ」
「お気になさらずに。当ホテルには優秀なスタッフが揃っております」
 職場や従業員を誇りに思っているのがわかる受け答えだった。
「さ、ドアを開けましょう」
 木田さんが重そうな扉を手前に引く。
 入り口から伸びる大理石のバージンロード。
「真っ白――」
 写真には虹のような光が写っているのに、そこには何もなく白い大理石だけがあった。
「じきにあたたかくなりますから、中へどうぞ」
 木田さんに促され、扉の前で靴を脱ぎたくなる衝動を抑え、真っ白なバージンロードに足を踏み出した。
「あちらを」
 木田さんに勧められたのは、壁面に設置されているステンドガラス。