「たぶんね、妹さんと翠葉ちゃんを重ねたんだと思う。妹さんが亡くなった年と翠葉ちゃんの年が同じだから」
「っ!?」
「翠葉ちゃん、落ち着いて? 若槻が翠葉ちゃんと普通に話せるようになればクリアできたと考えてもいいと思うんだ。あんな顔であんな態度を見せる若槻を目の当たりにするのは君もつらいと思う。でも、俺たちと一緒に若槻の支えになってもらえないかな? どうしても翠葉ちゃんが必要なんだ」
 私が、必要……?
 私を見てあんなにつらそうなのに、私が支えになれるの? 傷口を抉るだけではないの?
「大丈夫だよ。若槻は今のままじゃないから。……絶対に這い上がってくる」
 確信というよりは、それを願っている人の声だった。
「……私にできることがあるのなら――」
「翠葉ちゃんはいつもどおりでいいんだ」
 と、秋斗さんは優しい笑顔をくれた。
 そのままデスクに座るとノートパソコンを開く。
「蒼兄のパソコンの設定は終わったんですか?」
「終わったよ。ここにいる間は藤宮のメインコンピューターを経由して連動させることにしたから。問題なく使えるはず。問題が起きてもすぐに若槻が対応できる」
「お手数をおかけしてすみません……」
 秋斗さんはデスクに向けていた体をこちらに向けた。
「迷惑でも面倒でもないよ。若槻がこの仕事を静さんから請けていたから、俺は自分で考えるより早く翠葉ちゃんに会いに来ることができたんだ」
 言って秋斗さんはクスリ、と笑う。