「はい」
「入ってもいいかな?」
 ……秋斗、さん?
「翠葉、入るよ?」
 蒼兄の声が追加され、すぐにドアが開いた。
 蒼兄は部屋の照明を点けて入ってくる。その後ろには秋斗さんと若槻さんがいた。
「パソコンの設定をするから翠葉ちゃんのパソコンちょっといじるね」
 秋斗さんの手には私のノートパソコンがあった。
「お願いします……」
 蒼兄と秋斗さんが入ってきたものの、若槻さんは入ってこない。
「若槻くん?」
 蒼兄が声をかけるも、若槻さんは廊下に立ったままだ。
 今日はジーパンにTシャツというとてもラフな格好だからか、余計に若く見える気がした。
 制服を着せたら高校生で通ってしまいそうだ。
「若槻」
 秋斗さんが声をかけると、ようやく我に返ったようだった。
 でも、若槻さんに凝視されていた対象は私――。
 部屋に入ってこない原因は私にある気がした。
 今も私から視線を逸らさずにじっと見られている。
 顔色が悪いから? それとも痩せたから? それとも、横になっていて起きないから?
「あー……俺、あっちの設定確認してきます」
 と、踵を返すあたり、この部屋に入れない理由があるのは確かだった。
「蒼兄……私、何か悪いことしちゃったかな」
 口にすると、蒼兄ではなく秋斗さんが間髪あけずに「違うよ」と否定した。
「でも……」
「……若槻はね、妹さんを亡くしてるんだ」
 その言葉に、私も蒼兄も息を呑むことしかできなかった。