建物の前まで来ると、私を抱えたまま器用にドアを開けた。
 部屋に入るとベッドの上に下ろされる。
 そして、私の首にぶら下がっているカメラを取ると、ケースにしまいクローゼットへとしまった。
 私のところまで戻ってくると、ぼーっとしていた私に代わってブーツに手をかけた。
「あ、ごめんなさいっ。自分で――」
「手、かじかんでてちゃんと動かないんでしょう?」
 笑ってはそのまま脱がされてしまう。なぜか靴下まで。
 足先に秋斗さんの手が触れた。
「足、だいぶ冷えちゃったね。ちょっと待ってて」
 秋斗さんは洗面所へつながるドアを開き、その奥へと姿を消した。
 部屋に戻ってきた秋斗さんは、
「足湯で温まろう?」
「そこまでしていただかなくてもっ」
 今、優しくされすぎると困る。
 泣き出してしまいそうで困る。