「零樹さんと静さんから話は聞いたよ。翠葉ちゃんらしいけど、こんなときまでそんなふうに笑わなくていいから」
 秋斗さんの声が頭上と胸からの振動を伝って二通り聞こえる。
「大丈夫です……大丈夫じゃなくちゃだめ――」
「……君は人には優しいのに自分には厳しいね。……とりあえず、一度部屋へ戻ろう?」
 言われて頷くと、秋斗さんはカメラケースを手にとり、そのまま私のことまで抱き上げた。
「あのっ、自分で歩けますっ」
「それはどうかな? ずっと座ってたから、足が痺れてるんじゃない?」
 そう言って歩きだす。
「……あの、いつから見ていたんですか?」
「ずっと――って言ったら気持ち悪いかな?」
 秋斗さんは少し困った顔で笑う。
「休んでいたんじゃ……」
「そのつもりだったんだけどね……。見ていたかったんだ。でも、君の邪魔をしちゃいけないと思ったから部屋にいたけど」