「……お父さん、私、やっぱり報酬は受け取りたくない」
『翠葉ちゃん、それはなしだよ』
 ――お父さんの声じゃない。
『翠葉~、すまんっ、静に携帯を奪われた』
 遠くの方でお父さんの声がした。
 ということは、今携帯を持っているのは静さん……?
『そもそも、どうしてそんな話に?』
「…………撮れないんです。きれいなものが周りにたくさんあるのに、どれを見ても、どこを見ても、構図すら思い浮かばなくて……」
『なるほどね。……翠葉ちゃん、無理はしなくていいんだ。今回そこへ行ってもらったのは、ブライトネスパレスという場所を君の記憶に新しく構築するためだと思ってくれてかまわない』
 新しく、構築……?
『思い出そうと躍起にならなくていいし、写真を撮らなくてはいけないなんて思わず、ゆっくりと滞在しておいで』
「でも、それじゃ――」