「緑バカって……蒼樹、おまえ少し口悪くなったんじゃないか?」
「……『俺、やっぱり樹木師になる』って書置き残して音信不通、行方不明になる友人にはこんな対応で十分だ」
「あ、悪ぃ……。あのあと、とある樹木師に弟子入りして山中入ったら携帯つながらなくなっちゃってさ。そのまま放置してたら携帯どっかにいっちゃったんだ。あのとき使ってた携帯はお姉名義だったこともあって、いい機会だから解約してもらったんだよ」
 蒼兄にとっては空白の数年間を高崎さんは、カラっと話して埋めていく。
「で、一年前に土を探しにやってきたお姉と山でバッタリ鉢合わせてそのまま強制送還食らって戻ってきた。それからは園芸店と花屋、植物リース会社でアルバイトしつつ、インテリアコーディネーター、園芸装飾技能士、フラワー装飾技能士の資格を取って、今じゃ華麗なるグリーンコーディネーターに転身?」
 ものすごく行き当たりバッタリな気がするのに、まともな人生を歩んでいるように思えるのはどうしてだろう……。
 内容が濃いから、かな……。
「っていうか、葵が携帯なくした時点で俺たち連絡の取りようがないじゃん」
 蒼兄が呆れたように口にした。
「……あ、本当だ。でも、たぶんどっかで会えると思ってたし」
「葵のその楽天的な考えは全然変わらないな」
 蒼兄は呆れた表情のままに、仕方ないな、って感じで笑った。