光のもとでⅠ

「日陰に入ると気温がぐっと下がるから、それだけは気をつけるんだよ」
 秋斗さんに送り出され外に出たものの、きれいなものは目の前いっぱいに広がっているというのに、意識がそちらを向かない。
 緑と赤が混じる紅葉(もみじ)、切り込みの浅い楓。
 きれいだとは思うのに、写真に撮りたいと思わないのはどうしてだろう。
「……私、どうしちゃったのかな」
 でも、写真は撮らなくちゃいけないんだよね……?
 カメラケースからカメラを取り出し構えてみるものの、アングルすら定まらない。
 どうしよう……。
 紅葉(もみじ)の木の根元に座り込むと、そこから動けなくなってしまった。
 それは、物理的にではなく、精神的に。
 そんなとき、メールの着信があった。


件名 :紅葉はきれいか?
本文 :こっちはかなりきれいだぞー!